大人の歯列矯正~最適な始めるタイミングと準備すべきこと
2025年09月23日
大人の歯列矯正を始めるベストタイミングとは
歯並びが気になっているけれど、いつ矯正を始めればいいのか迷っていませんか?
大人になってからの歯列矯正は、思ったよりも一般的です。歯並びの悩みは見た目だけでなく、噛み合わせの問題や口腔内の健康にも関わる重要な問題です。特に近年では、20代から60代まで幅広い年齢層の方が矯正治療を受けるようになっています。
歯科医師として多くの患者さんを診てきた経験から言えることは、「矯正を始めるベストタイミングは、あなた自身が『始めたい』と思った時」だということです。年齢による制限はほとんどありません。50代、60代、さらには70代の方でも矯正治療は可能です。
ただし、いくつか考慮すべきタイミングがあります。

重要なイベント前の矯正開始
結婚式や就職活動など、人生の重要なイベントを控えている方は、そのタイミングを逆算して矯正を始めるのが理想的です。
例えば、結婚式の前に矯正を始める方は多いです。一生に一度の大切な日に、最高の笑顔で過ごしたいという気持ちは自然なことです。写真を撮る機会も多いため、歯並びを整えておきたいと考える方が増えています。この場合、結婚式の日程から逆算して治療計画を立てることが大切です。
就職活動を控えている方も、面接前に歯並びを整えることで自信を持って臨めるようになります。特に人と接する機会の多い職種では、第一印象が重要です。きれいな歯並びは、自己投資に力を入れている印象や、向上心のアピールにもつながります。
客室乗務員などの一部の職種では、入社後の矯正治療が制限されていることもあるため、就職前に矯正を完了させておくことをお勧めします。
日常生活に支障が出始めたとき
歯並びの問題が日常生活に影響を与え始めたら、それは矯正を検討するべきサインです。
例えば、噛み合わせの悪さから頭痛や肩こりが頻繁に起こるようになった、発音に問題が生じている、歯磨きがしづらく虫歯や歯周病のリスクが高まっているなど、機能的な問題が出てきた場合は早めに矯正を始めることをお勧めします。
特に歯並びが悪いことで口呼吸になりやすく、それが睡眠の質に影響していることもあります。このような場合、矯正治療は単なる見た目の改善だけでなく、健康面での大きな改善につながります。
時間的・経済的に余裕があるとき
矯正治療は一般的に1〜3年程度の期間がかかります。また、定期的な通院も必要です。
仕事や家庭の状況が落ち着いていて、時間的・経済的に余裕がある時期に始めることで、ストレスなく治療を続けられます。特に転勤や引っ越しの予定がない時期に始めるのが理想的です。
矯正治療は保険適用外の自費診療となるため、経済的な準備も重要です。治療費は矯正方法や症状の程度によって異なりますが、一般的に数十万円から百万円程度かかります。
大人の矯正治療の種類と特徴

大人の矯正治療には、いくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を理解して、自分に合った方法を選びましょう。
矯正方法の選択は、歯並びの状態、治療期間、見た目の好み、予算など様々な要素を考慮して決めることが大切です。どの方法が自分に合っているのか、歯科医師とよく相談しましょう。
ワイヤー矯正(表側矯正)
最も一般的な矯正方法で、歯の表面に装置を取り付けて歯を動かします。
従来のメタルブラケットは目立ちますが、最近ではセラミック製の白いブラケットや透明なブラケットも選べるようになり、見た目の抵抗感が少なくなっています。治療費は約70〜90万円程度で、複雑な歯並びの問題にも対応できる信頼性の高い方法です。
ワイヤー矯正は確実に歯を動かせる反面、装置が目立つことや、食べ物が装置に挟まりやすいというデメリットがあります。また、装置による口内の違和感や痛みが初期にはあるかもしれません。
しかし、複雑な歯並びの問題や大きく歯を動かす必要がある場合には、最も効果的な選択肢となります。
裏側矯正(リンガル矯正)
歯の裏側に装置を付ける矯正方法で、外からはほとんど見えないのが最大の特徴です。
接客業や人前に立つ仕事をしている方に特に人気があります。見た目を気にせず矯正できる一方で、装置が舌に当たるため発音しづらくなったり、違和感が強いというデメリットがあります。また、治療費も表側矯正より高くなる傾向にあり、約100〜150万円程度かかります。
慣れるまでに時間がかかることもありますが、見た目を最優先したい方には最適な選択肢です。
マウスピース矯正(インビザライン)
透明なマウスピースを使用する矯正方法で、近年特に人気が高まっています。
取り外し可能で目立ちにくいため、社会人に選ばれることが多い矯正方法です。食事や歯磨きの際に外せるので、口腔衛生を保ちやすいというメリットがあります。治療費は約80〜110万円程度で、症例によって異なります。
マウスピース矯正は、世界的に高いシェアを誇るインビザラインなどが有名です。アプリを活用して歯の移動軌跡をチェックできたり、マウスピースの交換時期のお知らせ機能があるなど、テクノロジーを活用した特徴もあります。
ただし、マウスピースを1日20時間以上装着する自己管理が必要なことや、複雑な症例には不向きな場合もあるというデメリットがあります。
大人の矯正治療を始める前の準備
矯正治療を始める前に、いくつかの準備が必要です。事前に知っておくことで、スムーズに治療を進めることができます。
矯正治療は長期間にわたるため、しっかりとした準備と心構えが大切です。特に大人の場合は、仕事や生活スタイルとの両立を考える必要があります。
口腔内環境の整備
矯正治療を始める前に、まずは虫歯や歯周病がないかチェックし、必要であれば治療を行います。
健康な歯や歯茎の状態で矯正治療を始めることが、治療の成功につながります。矯正装置を付けると歯磨きがしづらくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。そのため、矯正前に口腔内の問題を解決しておくことが重要です。
矯正専門のクリニックでは虫歯や歯周病の治療まで対応していないケースもあるため、矯正前の口内環境を整える治療を行っているかどうかも、医院選びの際のポイントになります。
また、親知らずが生えている場合は、矯正治療の妨げになる可能性があるため、抜歯が必要かどうかも検討します。
顎関節の状態確認
歯並びや噛み合わせの悪さは、顎関節にトラブルを引き起こすことがあります。
矯正治療を始める前に、顎関節症などの問題がないかチェックしておくことが大切です。顎関節症がある場合は、矯正前の初期治療としてスプリント療法などを行うことで、矯正治療の効果を高めることができます。
スプリント療法により、顎関節症起因の頭痛や肩こり、顎の痛みや疲れ、歯ぎしり、顎の異音などの改善が期待できます。
治療計画と費用の確認
矯正治療を始める前に、治療計画や費用について詳しく説明を受けましょう。
一般的な矯正治療の流れは、まず矯正相談から始まり、資料取り(口の状態や身体の状態を把握するための検査)、診断(資料の診断結果の説明)を経て、治療に移ります。
費用は矯正方法や症例の難易度によって異なりますが、予防矯正が約44万円、本格矯正(ワイヤー矯正)が約77〜88万円、マウスピース矯正が約88〜110万円程度が一般的です。これに加えて、定期的な通院時の再診料や、保定装置の費用なども考慮しておく必要があります。
また、矯正治療は保険適用外の自費診療となるため、医療費控除や歯科ローンなどの支払い方法についても確認しておくとよいでしょう。
大人の矯正治療のメリットとデメリット
矯正治療には様々なメリットがありますが、同時にデメリットも存在します。両方を理解した上で、治療を決断することが大切です。
大人の矯正は子どもの頃と違い、自分自身の意思で治療を進めるため、メリットとデメリットをしっかり把握しておくことで、治療へのモチベーションを維持しやすくなります。

大人の矯正治療のメリット
歯並びを整えることで、見た目の改善だけでなく、様々な健康上のメリットが得られます。
まず、見た目の印象が大きく変わります。きれいな歯並びは、笑顔に自信をもたらし、対人関係やビジネスシーンでの印象を良くします。実際、全国の20代〜50代男女を対象とした調査では、23.9%の人が「歯並びが悪いと好感が持てない」と回答しています。
健康面では、噛み合わせが改善されることで、顎関節症や頭痛、肩こりなどの症状が軽減することがあります。また、歯並びが整うことで歯磨きがしやすくなり、虫歯や歯周病のリスクが減少します。
さらに、大人になってからの矯正は、自分自身の意思で治療を進めるため、治療に対する理解や協力度が高く、トラブルが少ない傾向にあります。自分に合った矯正方法やスケジュールを選べることも大きなメリットです。
大人の矯正治療のデメリット
一方で、矯正治療にはいくつかのデメリットや注意点もあります。
まず、治療中の見た目が気になる方もいます。特にワイヤー矯正では装置が目立つことがあります。ただし、最近ではセラミックブラケットやマウスピース矯正など、目立ちにくい選択肢も増えています。
また、治療開始後しばらくは装置による違和感や痛みがあることがあります。一般的には数日〜1、2週間で慣れてきますが、個人差があります。
矯正装置により歯磨きがしづらくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。そのため、治療中は特に丁寧な口腔ケアが必要です。
治療期間は一般的に1〜3年程度と長期にわたるため、定期的な通院や自己管理の継続が必要です。また、治療後も保定装置を使用して歯並びを維持する必要があります。
歯を動かすことで、まれに歯根が吸収して短くなったり、歯肉が下がったりすることがあります。また、治療中に顎関節の痛みが生じることもあります。
矯正治療の流れと期間
矯正治療は一般的に以下のような流れで進みます。治療期間は症例によって異なりますが、理解しておくことで心の準備ができます。
矯正治療は一度始めると元の状態に戻すことが難しいため、治療の流れや期間をしっかり理解した上で始めることが大切です。
初診相談から治療開始まで
矯正治療は初診相談から始まります。この段階で、歯並びの悩みや疑問点について歯科医師に相談し、最適な矯正治療プラン、時期、費用などについて説明を受けます。
次に資料取りを行います。現在の口の状態や身体の状態を詳しく把握するための検査で、口や顔の写真撮影、レントゲン撮影、口内のスキャンなどを行います。
資料取りから約2週間後に診断を受けます。ここで資料の診断結果について説明を受け、治療の流れや費用などについて詳しく案内されます。
これらのステップを経て、実際の治療が始まります。治療方法は、永久歯がすべて生えそろっているかどうかや、症例の難易度によって異なります。
治療中の通院頻度と期間
矯正治療中は定期的な通院が必要です。通院頻度は治療方法や症例によって異なりますが、一般的には1〜2ヶ月に1回程度です。
ワイヤー矯正の場合は、ワイヤーの調整や交換のために通院が必要です。マウスピース矯正では、新しいマウスピースを受け取るために通院します。
治療期間は症例の難易度や治療方法によって大きく異なりますが、一般的には1〜3年程度です。軽度の症例であれば半年程度で終わることもありますが、複雑な症例では3年以上かかることもあります。
治療期間中は、装置の使用状況や顎間ゴムの使用状況、定期的な通院など、患者さん自身の協力が治療結果や治療期間に大きく影響します。
治療後のメンテナンス
矯正治療が終了した後も、歯並びを維持するためのメンテナンスが必要です。これを保定治療と呼びます。
保定装置(リテーナー)を使用して、きれいに並んだ歯並びを維持します。歯並びは永久的なものではなく、加齢変化で徐々にでこぼこが出てくることがあるため、アンチエイジングの意味でも保定装置を用いたメンテナンスが重要です。
保定期間は個人差がありますが、多くの場合、最初の数ヶ月は終日装着し、その後は就寝時のみの装着に移行します。長期的には、一生涯にわたって就寝時に装着することが理想的です。
大人の矯正治療で気をつけるべきこと
大人の矯正治療を成功させるためには、いくつかの注意点があります。これらを理解し、対策を立てておくことが大切です。
矯正治療は長期間にわたるため、日常生活の中でどのように管理していくかが重要です。特に大人の場合は、仕事や社会生活との両立を考える必要があります。
口腔衛生管理の重要性
矯正装置を付けると歯磨きがしづらくなるため、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
特にワイヤー矯正の場合、装置の周りに食べ物が溜まりやすくなります。そのため、食後はすぐに歯磨きをする習慣をつけることが大切です。歯間ブラシやデンタルフロス、水流歯磨き器などの補助器具を使用すると、装置の周りの清掃がしやすくなります。
また、定期的に歯科医院でのクリーニングを受けることも重要です。矯正治療中は3〜4ヶ月に一度程度のペースでプロフェッショナルクリーニングを受けることをお勧めします。
食事制限と生活習慣の調整
矯正装置によっては、食べ物に制限が出ることがあります。
ワイヤー矯正の場合、硬いものや粘着性の高いものは装置を破損させる恐れがあるため、注意が必要です。例えば、リンゴや固いせんべい、キャラメルなどは避けるか、小さく切って食べるようにしましょう。
マウスピース矯正の場合は、食事の際に装置を外すため食事制限はありませんが、装着時間(1日20時間以上)を守ることが重要です。また、装置を外した後は必ず歯磨きをしてから装着する必要があります。
喫煙者の方は、マウスピースが変色する恐れがあるため、喫煙時も装置を外す必要があります。ただし、装着時間が減ってしまうと治療効果が下がるため、禁煙を検討するのも一つの選択肢です。
痛みや違和感への対処法
矯正治療を始めてしばらくは、装置による違和感や痛みを感じることがあります。
これは歯が動き始めるために起こる正常な反応ですが、不快に感じることもあるでしょう。一般的には数日〜1、2週間で慣れてきますが、その間の対処法を知っておくと安心です。
痛みがある場合は、市販の鎮痛剤を服用するか、歯科医師に相談して適切な薬を処方してもらうことができます。また、柔らかい食べ物を選ぶことで、咀嚼時の痛みを軽減できます。
装置が口内を傷つける場合は、歯科用ワックスを装置の上から貼ることで、摩擦を減らすことができます。どうしても違和感が強い場合は、歯科医師に相談しましょう。調整が必要な場合があります。
まとめ:大人の歯列矯正を成功させるために
大人の歯列矯正は、見た目の改善だけでなく、口腔内の健康や全身の健康にも良い影響をもたらします。
矯正を始めるベストタイミングは、あなた自身が「始めたい」と思った時です。年齢による制限はほとんどなく、50代、60代、70代でも矯正治療は可能です。ただし、重要なイベント前や、時間的・経済的に余裕がある時期に始めるのが理想的です。
矯正方法には、ワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正などがあり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。自分の歯並びの状態や生活スタイル、予算に合った方法を選ぶことが大切です。
矯正治療を始める前には、口腔内環境の整備や顎関節の状態確認、治療計画と費用の確認などの準備が必要です。また、治療中は口腔衛生管理や食事制限、痛みや違和感への対処など、いくつかの注意点があります。
矯正治療は長期間にわたりますが、きれいな歯並びを手に入れることで、笑顔に自信が持て、口腔内の健康も向上します。歯科医師とよく相談しながら、自分に合った矯正治療を進めていきましょう。
あなたの新しい笑顔が、より充実した人生につながることを願っています。






