指しゃぶり・舌癖は歯並びに影響する?やめさせ方と小児矯正が必要な目安
2026年01月22日
子どもの指しゃぶりや舌癖が気になる保護者の方へ
お子さんが指をくわえている姿を見ると、とても愛らしく感じますね。
しかし、3歳を過ぎても指しゃぶりが続いている場合や、舌を前に出す癖が見られる場合、保護者の方は「歯並びに影響するのでは」と心配されることも多いでしょう。実際、指しゃぶりや舌癖は、お子さんの歯並びや噛み合わせに大きな影響を与える可能性があります。
この記事では、小児歯科医の視点から、指しゃぶりや舌癖が歯並びに与える影響、家庭でできる対処法、そして小児矯正が必要になる目安について詳しく解説していきます。お子さんの健やかな成長のために、正しい知識を持って適切に対応していきましょう。
指しゃぶりはいつまでなら問題ない?年齢別の考え方

指しゃぶりは、赤ちゃんの成長過程において自然な行動です。
生後2〜4ヶ月頃から見られるようになり、実はお腹の中にいるときから赤ちゃんは指しゃぶりをしています。これは母乳を吸うための練習ともいわれており、口の感覚を通じて周りの物を知る手段として重要な役割を果たしているのです。
3歳までは様子を見て大丈夫
1〜2歳半の幼児期前半は、比較的歯並びに影響が出ることは少ないとされています。この時期の指しゃぶりは、眠い時やお腹がすいたとき、不安な時や心が落ち着かない時に行われることが多く、お子さんにとって精神的に安定するための大切なしぐさです。
3歳までの指しゃぶりであれば、基本的には様子を見てあげてください。多くのお子さんは、保育園や幼稚園に入ると友達が増え、言葉も覚えて気持ちを伝えられるようになり、周囲の環境にも慣れていくことで、自然と指しゃぶりはしなくなります。
3歳以降は長時間続く場合に注意が必要
3歳を過ぎてからの指しゃぶりについては、長時間続かない限りほとんど問題ないといわれています。機嫌が悪い時に指しゃぶりをする癖がある程度や、寝る前に少し指しゃぶりをしている時がある程度なら、無理にやめさせる必要はありません。
ただし、寝ている間ずっと指しゃぶりをしているなど一日の中で長時間続けてしまっている場合や、4歳を過ぎても頻繁に続いてしまっている場合は、指しゃぶりをやめられるように環境を整えてサポートしてあげることが大切です。3歳頃から歯やあごの骨の成長が活発になる時期で、指を吸うと上の前歯に強い力がかかるため、歯を前方に押し出したり、吸う力で上あごが狭くなったりする可能性があります。
指しゃぶり・舌癖が歯並びに与える具体的な影響
長期間の指しゃぶりや舌癖は、歯並びやかみ合わせに様々な影響を及ぼします。
上顎前突(出っ歯)になるリスク
指しゃぶりで指をくわえると、親指で上あごを前方に押し出すような強い力がかかります。その結果、上あごの骨や上の前歯が前に出てしまい、上顎前突(じょうがくぜんとつ)、いわゆる「出っ歯」の状態になることがあります。下の歯は内側に押されるような力がかかり、下の前歯は内側に傾きやすくなります。
上顎前突になると、唇が閉じにくいため口呼吸の原因にもなり、唇を無理に閉じようとするとあごにしわが寄り、怒ったような表情になってしまうこともあります。笑った際には上唇がめくり上がりやすくなり、歯茎まで見える「ガミースマイル」の状態になることもあります。
開咬(かいこう)のリスク
開咬とは、奥歯をかみ合わせた時に上下の前歯にすき間ができている状態です。指しゃぶりを長時間続けると、上下の歯をカチッと噛み合わせたとき、上下の前歯の間に隙間ができてしまい、前歯を噛み合わせできない状態になります。
前歯でかむことができないので、奥歯の負担が大きくなり、発音もはっきりしなくなります。特にサ行・タ行は発音時に前歯の隙間から空気が漏れて発音がしにくくなります。前歯に隙間があるため、麺類やハンバーガーなどの食べ物を前歯でかみ切ることができず、食べ物を噛むときは主に奥歯を使うことで、将来的に奥歯に大きな負担をかけることになります。
歯列狭窄(しれつきょうさく)のリスク
指を吸う力によって上あごの歯列が狭くなる「歯列狭窄」になることもあります。上あごの歯並びのアーチが指を吸いこむときほっぺたの筋肉を収縮させるので、狭いアーチ(V字歯列弓)になってきます。こうなってしまうと、上唇もまくれ上がって、「お口ポカン」の状態になり、口呼吸になっていきます。
舌癖(ぜつへき)とは?歯並びへの影響

舌癖とは、前歯を舌で押す、舌を噛むなどの癖のことです。
口を閉じている間、正常であれば舌先は上の前歯の付け根より少し手前に当たっていなければなりません。しかし、舌が常に歯に触れている状態の場合は要注意です。舌癖は、歯に不自然な圧力をかけてしまうため、歯が前に出てしまうなどの弊害を生み出してしまう可能性があります。
舌癖が引き起こす不正咬合
舌癖は、上顎前突(出っ歯)や開咬、すきっ歯のようなさまざまな歯列不正を招きます。ものを飲み込む際に、舌で前歯を押してしまうなど、間違った飲み込み方(異常嚥下)をしてしまうことで開咬や上顎前突になってしまう可能性があります。
さらに、上下の前歯の間から舌も吐出してきて舌癖を誘発し、口元も出てきて、顔貌にも変化が表れることがあります。開咬の状態になると、前歯の隙間に舌を入れる悪い癖によって、更に開咬がひどくなることもあります。
口呼吸との関連性
口呼吸でいつも口がポカンと開いたままでいると、舌の位置が正しい場所からズレてしまったり、唇や舌の筋力が低下してしまったりすることに繋がります。筋力が低下することで、上顎前突(出っ歯)や叢生(そうせい)という歯列が狭くなり、歯が重なり合ってしまう状態などが起こるリスクが高まります。
口呼吸をすると、舌が下顎に沿ったまま格納される状態になり、上顎の成長を阻害してしまい、歯並びを悪くさせてしまうのです。また、病原菌が粘膜に直接付着しやすくなるため、風邪を引きやすくなるというデメリットもあります。
家庭でできる指しゃぶり・舌癖のやめさせ方

お子さんが指しゃぶりや舌癖をやめられるよう、家庭でできるサポート方法をご紹介します。
きつく叱るのは逆効果
指しゃぶりを止めさせようとして、きつく叱るのはやめましょう。仮に止めたように見えても、爪咬みなど、他の代償行為に走りがちです。この時期のお子さんは、まだ、指しゃぶりを悪いことだとは思っていないので、さらに、隠れてするようになることもあります。
「本当は自分でもやめたいけれど、やめられない」というお子さんも多いため、優しくサポートしてあげることが大切です。
意識を別のところに向ける声かけ
指しゃぶりをしている時に声かけをして意識を別のところに向けさせることで、だんだんおさまることがあります。外に遊びに行く、手を使った遊びを教えるなど、お子さんの興味を他のことに向けてあげましょう。
就寝時の指しゃぶりなど、癖的な指しゃぶりで多くのお子さんに見られますが、お子さんが眠るまで保護者の方が手を握っていてあげるのも効果的です。
具体的な対処グッズの活用
手袋をして指しゃぶりをした時に違和感を与えることで、だんだんおさまることがあります。他にも、お気に入りのキャラクターのばんそうこうを指に貼って、うっかり口に入れるのを防ぐ方法や、赤ちゃん用品店で売っている、口に入れると苦い味がする無害なマニキュアを利用する方法もあります。
行動の置き換えとサポート
指しゃぶりの代わりになる安心できるアイテム(ぬいぐるみなど)を提供し置き換えさせることも有効です。また、指しゃぶりを引き起こす環境因子を減らし、不安やストレスを少なくすることも大切です。しゃぶらない行動をほめて奨励することで、お子さんが自発的にやめられるようサポートしましょう。
小児矯正が必要になる目安とタイミング
指しゃぶりや舌癖によって歯並びに影響が出た場合、小児矯正が必要になることがあります。
不正咬合の症状が見られる場合
指しゃぶりによって上下の前歯にすき間がある、前歯で食べ物がかみづらい、発音がはっきりしないなど不正咬合の症状がみられる場合は、小児歯科で治療を行う必要があります。
上顎前突(出っ歯)の場合、原因になるくせがある場合は3歳ごろからやめるように促していきます。治療が必要な場合は、永久歯の前歯が生えそろう8歳くらいから矯正装置を使用します。開咬の場合も、指しゃぶりや舌の位置がおかしいなどのくせがある場合は3歳ごろからやめるように促し、6〜8歳ごろを目安に矯正装置をつけて治療します。
5歳を過ぎても指しゃぶりが続いている場合
指しゃぶりは大抵の場合、3歳から4歳にかけて自然に減少し行われなくなりますが、5歳を過ぎても指しゃぶりが続いている場合、状況にもよりますが専門的な介入が推奨されます。5、6歳の永久歯の生え代わりの時期にまだ指しゃぶりを続けていると、上顎前突、いわゆる上の歯が前に出た「出っ歯」の状態になるリスクが高まります。
子どもの矯正治療「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」の違い

子どもの矯正治療は、大きく分けて「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」の2段階に分かれます。
Ⅰ期治療:口腔習慣の改善が目的
そもそもお子さんの歯並びが悪くなってしまう大きな原因には、噛み合わせや口の使い方の癖による口腔周囲筋の機能不全があります。口を閉じている間に舌先が歯の裏に当たってしまっている「舌癖」、食事を飲み込む際に舌が前側に出て行ってしまう「逆嚥下」、日常的に口を開けたまま呼吸をしてしまう「口呼吸」などです。
Ⅰ期治療では、こうした歯並びを悪くしてしまう習慣を矯正するために「歯列矯正用咬合誘導装置(マイオブレース)」という方法で改善していきます。マイオブレース矯正は、歯を直接動かすのではなく、習慣の改善から歯並びを悪化させないようにするトレーニングを通じて理想の歯並びに近づけていきます。
歯列矯正用咬合誘導装置(マイオブレース)は、本来の子どもの歯並びの正常な発育を促すだけでなく呼吸機能の改善など健康面においても大きなメリットがあることで注目され、25年経った現在では100ヶ国以上に広まっています。歯だけでなく、顎顔面全体を口腔周囲筋のバランスの取れた場所へ動かすので後戻りしにくいこともメリットの1つです。
Ⅱ期治療:歯並びの本格的な矯正
理想はⅠ期治療で矯正を終えることですが、状況次第ではⅡ期治療が必要となる場合があります。「歯並びが悪い」「歯が回転してねじれた状態で生えてきた」「上下の歯がうまく噛み合わない」など、こうしたトラブルに見舞われた場合、Ⅱ期治療に移行していきます。
Ⅱ期治療では、成人の方や永久歯に生え変わったお子さんが対象となり、すべての歯に矯正装置を装着し、理想的な歯並び、かみ合わせを目指す治療です。唇側マルチブラケット矯正(ワイヤー型)とマウスピース矯正(インビザライン)の2種類があります。
むらせ歯科幕張院の小児矯正アプローチ
当院では、お子さんの歯並びの問題に対して包括的なアプローチを行っています。
透明なマウスピース矯正(インビザライン)
当院では透明なマウスピースを用いて矯正治療を行います。世界的に高いシェアを誇るマウスピース型カスタムメイド矯正装置(インビザライン)を導入しており、透明で目立ちにくく、取り外し可能なためお口の違和感を最小限に抑えることができます。
これまでと変わらず食事を楽しむことができ、マウスピースを外せば歯磨きや装置の洗浄も簡単に行うことができる点は大きなメリットです。また、アプリを活用して患者さんと医院のコミュニケーションを円滑化し、スライドショーを使って歯の移動軌跡をチェックできるようにしています。
虫歯・歯周病治療にも対応
当院では、矯正治療に留まらず、虫歯や歯周病などの治療にも対応しています。矯正治療を始めるうえで、何よりも重要なのは口内環境維持ですから、まずは虫歯や歯周病がないかしっかりとチェックし、必要があれば病気の治療から始めます。
矯正専門のクリニックでは虫歯や歯周病の治療まで対応してくれないケースも多々見られるため、当院のような対応は珍しいかもしれません。矯正器具も、歯に固定するタイプは特に汚れが付着しやすいことから、虫歯や歯周病を起こすリスクは高くなるため、矯正前の口内環境を整える治療行為も重要視しています。
顎関節トラブルへの配慮
歯並びが悪い、噛み合わせが悪い、という人は、顎の関節にトラブルが見られることがあります。当院では矯正前の初期治療として、顎関節症などのトラブルを解決するスプリント療法(別途費用11万円・税込)を行い、矯正治療をより効果の高いものにしていくことができます。
スプリント療法を実施することにより、顎関節症起因の頭痛や肩こり、顎の痛みや疲れ、歯ぎしり、顎の異音などの改善を見込むことが可能です。
矯正治療の流れと費用について
当院での矯正治療は、以下のような流れで進めていきます。
矯正相談から診断まで
まず矯正相談からスタートし、歯並びの不安や疑問点などについてお伺いし、最適な矯正治療プラン、時期、金額などについて詳しくご説明します。当院に通院されている患者様については、相談料はかかりません。
ご相談から治療へ進む方には、現在のお口の状態や身体の状態などを詳しく把握するための検査(資料取り)を行わせていただきます。資料取りを行っていただいてから2週間後、再度ご来院頂いて資料の診断結果についてご説明させていただきます。
予防矯正と本格矯正の費用
診断の結果を踏まえて、治療に移ります。永久歯が生えそろう前のお子様の治療の場合、予防矯正から始める場合があります。予防矯正は永久歯にすべてが生え変わる前のお子様が対象の矯正治療で、主に骨格に問題がある場合や、個々の歯の位置が悪く、放置してしまうと今後歯並びが悪化する可能性のある場合などが対象となります。料金は440,000円(税込)です。
本格矯正は、成人の方や永久歯に生え変わったお子様が対象となります。唇側マルチブラケット矯正(ワイヤー型)は770,000円〜880,000円(税込)、マウスピース矯正(インビザライン)は880,000円〜1,100,000円(税込)です。予防矯正から移行した場合は330,000円(税込)となります。
メンテナンス・保定治療
治療後はメンテナンス・保定治療を行い、きれいに並んだ歯並びを維持します。歯並びというのは、永久的なものではありません。歯は、加齢変化で徐々にでこぼこがでてくるものなのです。アンチエイジングの意味でも、きれいに並んだ歯をずっときれいに維持するためには保定装置を用いたメインテナンスが必要になります。
矯正治療のリスクと副作用について
矯正治療には、いくつかのリスクや副作用があることも理解しておく必要があります。
矯正歯科装置を付けた後しばらりは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間〜1、2週間で慣れてきます。歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性があります。
治療中は矯正歯科装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
歯を動かすことにより歯根が吸収して短くなることや歯肉がやせて下がることがあります。ごくまれに歯が骨と癒着していて歯が動かないことや、歯を動かすことで神経が障害を受けて壊死することがあります。治療中に顎関節の痛み、音が鳴る、口が開けにくいなどの症状が生じることもあります。
動的治療が終了し装置が外れた後に保定装置を指示通り使用しないと、歯並びや、咬み合せの「後戻り」が生じる可能性があります。あごの成長発育により咬み合せや歯並びが変化する可能性や、治療後に親知らずの影響で歯並びや咬み合せに変化が生じる可能性もあります。
まとめ:早めの相談と適切な対処が大切
指しゃぶりや舌癖は、お子さんの成長過程における自然な行動ですが、3歳以降も長時間続く場合は歯並びや噛み合わせに影響を与える可能性があります。
上顎前突(出っ歯)、開咬、歯列狭窄などの不正咬合を引き起こすリスクがあり、放置すると食事や発音にも支障をきたすことがあります。家庭でできる対処法としては、きつく叱らずに優しくサポートし、意識を別のところに向ける声かけや、手袋やばんそうこうなどのグッズを活用する方法があります。
5歳を過ぎても指しゃぶりが続いている場合や、不正咬合の症状が見られる場合は、小児歯科での専門的な介入が推奨されます。子どもの矯正治療は「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」の2段階に分かれており、Ⅰ期治療では口腔習慣の改善を、Ⅱ期治療では歯並びの本格的な矯正を行います。
当院では、透明なマウスピース矯正(インビザライン)を用いた目立ちにくい矯正治療を提供しており、虫歯や歯周病の治療にも対応しています。顎関節トラブルに配慮したスプリント療法も実施可能です。お子さんの歯並びや口腔習慣について気になることがあれば、お気軽にご相談ください。早めの対応と適切な方法で介入することが、お子さんの健やかな成長につながります。
お子さんの歯並びや指しゃぶり・舌癖について、少しでも気になることがあれば、むらせ歯科幕張院までお気軽にご相談ください。経験豊富な小児歯科医が、お子さん一人ひとりに最適な治療プランをご提案いたします。






