子どもの受け口対策|早期の生活改善でできる予防とケア
2025年12月9日
子どもの受け口対策|早期の生活改善でできる予防とケア

受け口とは何か~子どもの成長に影響する噛み合わせの問題
受け口は、下の前歯が上の前歯よりも前に出ている状態を指します。
正式には「反対咬合」や「下顎前突」と呼ばれ、見た目の問題だけでなく、発音や咀嚼機能にも影響を及ぼす可能性があります。通常、正常な噛み合わせでは上の歯が下の歯を覆う形が保たれますが、受け口の場合はその逆となり、噛み合わせに異常が生じるのです。
子どもの受け口には主に3つのタイプがあります。歯の生える位置の異常が原因で生じる「歯槽性受け口」、骨格のバランスが原因で生じる「骨格性受け口」、そして噛み合わせを補正しようとする動作が原因で生じる「機能性受け口」です。
受け口は自然に治ることが少なく、乳歯から永久歯に生え変わる際に自然治癒する確率は6~10%未満というデータがあります。つまり、受け口が勝手に治るという確率は極めて少ないため、早期の対応が重要になるのです。

子どもが受け口になる主な原因
遺伝的要因による影響
受け口は遺伝的要因によって発生することが多いとされています。
親から受け継がれる骨格の特徴が影響を及ぼし、家族に下顎が発達しすぎている、または上顎の成長が不十分な特徴を持つ人がいる場合、子どもも受け口になる可能性が高まります。歯並び自体が遺伝することは基本的にありませんが、受け口になりやすい骨格などが遺伝する可能性はあるのです。両親のどちらか、または祖父母の中に受け口の人がいると、子どもにも同じような傾向が見られることがあります。
生活習慣や癖による後天的な要因
幼少期の生活習慣や癖も受け口の原因となることがあります。
指しゃぶりや長時間の哺乳瓶の使用、適切な舌の位置が保たれない状態、さらには頬杖をつく習慣などが、歯並びや顎の発育に影響を与える可能性があります。特に、舌の使い方が正しくないと、下顎を前に押し出すような動きが習慣化し受け口になりやすくなるのです。
口を閉じている間に舌先が歯の裏に当たってしまう「舌癖」、食事を飲み込む際に舌が前側に出て行ってしまう「逆嚥下」、日常的に口を開けたまま呼吸をしてしまう「口呼吸」などが代表的な悪習慣として挙げられます。
健康問題と口腔環境
慢性的な鼻づまりやアレルギー性鼻炎などの健康問題も、受け口の原因となることがあります。
これらの問題があると、口呼吸が習慣化し、顎や歯列の発育に影響を与えることがあるのです。口呼吸をすると、舌が下顎に沿ったまま格納される状態になり、上顎の成長を阻害してしまい、歯並びを悪くさせてしまいます。また、病原菌が粘膜に直接付着しやすくなるため、風邪を引きやすくなるというデメリットもあります。
さらに、乳歯が正しく生えそろわなかったり、虫歯や外傷で早期に失われたりすると、歯並びが乱れやすくなります。特に、前歯の位置に影響が出ると、下の歯が前に出やすくなり、受け口を誘発することがあるのです。
受け口を放置するリスクと子どもへの影響
咀嚼機能への悪影響
受け口は噛み合わせが不適切な状態であるため、食べ物を十分に噛み砕くことが難しくなることがあります。
これにより、消化器官に負担がかかり、消化不良や栄養吸収の低下を引き起こす恐れがあります。また、前歯や奥歯に過剰な負担がかかることで、歯の摩耗や歯周病のリスクが高まる可能性もあるのです。通常、上の前歯が前で、下の前歯がその後ろにあるため、下の顎の成長は前歯部分で規制され、上の顎の成長以上には成長できません。しかし、受け口の場合は、上の前歯のより前に下の前歯があるため、下の顎の成長が上の顎に妨げられることがなくなり、成長とともにどんどんと受け口になってきてしまいます。

発音や言語能力への影響
受け口の状態では、舌の動きが制限されるため、特にサ行やタ行の発音が難しくなることがあります。
これにより、言葉が不明瞭になり、コミュニケーションに支障をきたすことがあるのです。こもったような声になったり、空気の漏れたような話し方になったりすることもあります。特に、幼少期は言語能力が発達する重要な時期であるため、早期の対応が求められます。受け口が原因で発音障害になると、引っ込み思案になるなど、自身にコンプレックスを持つことも少なくありません。
見た目への影響と心理的負担
受け口を放置すると、成長に伴い下顎がさらに前方に突出し、顔全体のバランスが崩れることがあります。
この結果、顎がしゃくれて見えるなど、外見上のコンプレックスを抱える原因となる可能性があります。通常、上顎は10歳前後、下顎は15~18歳前後まで成長するといわれており、上顎の成長が止まった思春期以降に下顎がさらに成長し、受け口が悪化することがあるのです。思春期以降は外見を気にする年齢でもあるため、心理的な負担が大きくなることが考えられます。
早期の生活改善でできる受け口の予防方法
赤ちゃんの時期からできる予防~哺乳瓶とおしゃぶりの選び方
受け口の予防は、赤ちゃんの時期から始めることが可能です。
顎・口周りの筋肉を適切に発達させるため、一般的な哺乳瓶と比べて吸う力を要する母乳育児をおすすめします。粉ミルクを哺乳瓶で飲む場合にも、赤ちゃんがしっかり吸う力を使う哺乳瓶を選ぶとよいでしょう。哺乳瓶の先端を下にしてもミルクが垂れてこない哺乳瓶、つまり簡単にミルクが出るものではなく、しっかりと赤ちゃんが吸うことでミルクが出る哺乳瓶を選択することが大切です。また、赤ちゃんの吸う時の舌の位置が適切な場所にくる哺乳瓶が最適とされています。
おしゃぶりの使用も効果的です。赤ちゃんが寝ている時など、何もしていない時に口をポカンと開けていると、上の前歯よりも下の前歯が出てきてしまう原因となります。おしゃぶりを使用すれば、これを防ぐことができるのです。ただし、おしゃぶりについては様々な見解があり、2歳から3歳の間にやめていただき、効果的にお使いになることをおすすめします。
食生活の工夫~噛む力を育てる
お口周りの筋肉を鍛えることも重要な予防策です。
咀嚼回数が少ない食生活や、柔らかい食べ物中心の食事は、顎の正常な発育を妨げることがあります。しっかり噛む練習をすることで、口の周りの筋肉をきちんと使って噛み合わせが安定し、後戻りしにくくなるのです。栄養不足や口腔機能の発達が不十分な場合も、受け口の原因となり得るため、バランスの取れた食事と適切な咀嚼習慣を身につけることが大切です。

悪習慣の改善~舌癖や口呼吸への対処
指しゃぶりや頬杖の習慣を改善することも予防に効果的です。
口を閉じている間、舌先は上の前歯の付け根より少し手前に当たっていなければなりません。舌が常に歯に触れている状態の場合は要注意で、これを「舌癖」といい、歯に不自然な圧力をかけてしまうため、歯が前に出てしまうなどの弊害を生み出してしまう可能性があります。
鼻呼吸を促すことも重要です。口呼吸の習慣がある場合、舌の位置が下がるため、正常な顎の発育を妨げることにつながります。お母さんはお子さんの呼吸の仕方をよく観察し、口呼吸が習慣化している場合は早めに対処することが大切です。
定期的な歯科検診の重要性
子どもの歯並びがおかしいと感じた頃が治療開始のタイミングです。
4~5歳のタイミングで一度歯科医院を受診すると良いでしょう。早期に発見し、適切な対応をすることで、お子さんの負担も家庭の経済負担も軽く済みます。様子を見てその時放置しておくと、犬歯が生えるスペースが無くなってしまい、複雑な矯正治療になってしまう可能性があります。
子どもの受け口の治療方法と適切な開始時期
治療を始める最適な年齢
子どもの受け口を矯正する場合、永久歯が生える前の4~5歳ごろに矯正を始めるのがよいとされています。
骨格的な問題がある場合は3歳ごろから、歯並びに原因がある場合は6歳ごろから受け口になるといわれています。そのため、永久歯が生える前の4~5歳ごろから矯正を開始するとよいでしょう。子どもの顎の成長を利用することで、骨格から受け口を改善でき、悪習癖を解消でき、将来的に抜歯を回避できるというメリットがあります。
少なくとも6歳前後~12歳までの間に受け口を治されることをお勧めします。大人の歯が生え揃ってしまってから受け口を治そうとすると、顎を切って治すという手術になってしまうことがあるため、子どもの成長を利用できる時期に負担の少ない矯正治療を行っていくことが大切なのです。
Ⅰ期治療~歯列矯正用咬合誘導装置による改善
子どもの矯正治療は、大きく分けて「Ⅰ期治療」と「Ⅱ期治療」の2段階に分かれます。
Ⅰ期治療では、口呼吸、舌癖、逆嚥下などの習慣を改善するために「歯列矯正用咬合誘導装置(マイオブレース)」や「ムーシールド」を使用します。これらは、歯を直接動かすのではなく、習慣の改善から歯並びを悪化させないようにするトレーニングを通じて理想の歯並びに近づけていく方法です。
ムーシールドは、お子さんの口のまわりの筋肉や舌の動きを正しく導き、受け口を治す着脱式の装置で、主に夜寝ている時に装着します。反対咬合の原因の1つは舌が低い位置で機能していることであり、治療目標はまず舌を挙上することです。就寝中に使用し、取り外しできる装置ですから、お子さん自身で付け外しが出来るため、痛みがあったときには簡単に取り外せます。
Ⅱ期治療~本格的な矯正治療
歯並びの状態によってはⅠ期治療のみで完了する場合もありますが、状況次第ではⅡ期治療が必要となる場合があります。
「歯並びが悪い」「歯が回転してねじれた状態で生えてきた」「上下の歯がうまく噛み合わない」など、こうしたトラブルに見舞われた場合、Ⅱ期治療に移行していきます。Ⅱ期治療では、床矯正、インビザライン・ファースト、フェイスマスク、チンキャップなどの装置を用いた治療が行われます。

当院では、透明なマウスピースを用いた矯正治療も提供しており、特に世界的に高いシェアを誇るインビザライン(マウスピース型カスタムメイド矯正装置)を導入しています。透明で目立ちにくく、取り外し可能なため口内の違和感を最小限に抑えられるという特徴があり、食事を楽しみながら、マウスピースを外せば歯磨きや装置の洗浄も簡単に行うことができます。
矯正治療に伴うリスクと注意点
矯正治療には、いくつかのリスクや副作用があることも理解しておく必要があります。
矯正装置を付けた後しばらりは違和感、不快感、痛みなどが生じることがありますが、一般的には数日間~1、2週間で慣れてきます。歯の動き方には個人差があり、予想された治療期間が延長する可能性もあります。治療中は矯正装置が歯の表面に付いているため食物が溜りやすく、また歯が磨きにくくなるため、むし歯や歯周病が生じるリスクが高まります。したがってハミガキを適切に行い、お口の中を常に清潔に保ち、さらに、かかりつけ歯科医に定期的に受診することが大切です。
むらせ歯科幕張院の小児矯正へのアプローチ
包括的な口腔ケアと矯正治療の連携
当院では、矯正治療に留まらず、虫歯や歯周病などの治療にも対応しています。
矯正治療を始めるうえで、何よりも重要なのは口内環境維持ですから、まずは虫歯や歯周病がないかしっかりとチェックし、必要があれば病気の治療から始めるのです。矯正専門のクリニックでは虫歯や歯周病の治療まで対応してくれないケースも多々見られるため、当院のような対応は珍しいかもしれません。矯正器具も、歯に固定するタイプは特に汚れが付着しやすいことから、虫歯や歯周病を起こすリスクは高くなります。
顎関節トラブルへの配慮
歯並びが悪い、噛み合わせが悪い、という人は、顎の関節にトラブルが見られることがあります。
当院では矯正前の初期治療として、顎関節症などのトラブルを解決するスプリント療法を行い、矯正治療をより効果の高いものにしていくことができます。スプリント療法を実施することにより、顎関節症起因の頭痛、肩こり、顎の痛み、疲れ、歯ぎしり、顎の異音などの改善を見込むことが可能です。
アプリを活用した患者さんとのコミュニケーション
矯正中は歯の移動具合がわかりにくいため、現在までにどの程度の変化があったか知ることができると励みになります。
当院では、患者さんとのコミュニケーションを円滑化するためのアプリを導入し、スライドショーを使って歯の移動軌跡をチェックできるようにしました。これにより、コミュニケーションだけではなくマウスピースの交換時期のお知らせにも役立っています。
まとめ~子どもの受け口は早期対応が鍵
子どもの受け口は、放置していて改善されることはほとんどありません。
遺伝的要因や生活習慣、健康問題など、さまざまな原因が複雑に絡み合って発生しますが、早期に発見し、適切な予防と治療を行うことで、大きな改善が期待できます。赤ちゃんの時期からの哺乳瓶やおしゃぶりの選び方、食生活の工夫、悪習慣の改善など、日常生活でできる予防策も多くあります。
4~5歳のタイミングで一度歯科医院を受診し、お子さんの状態を確認することをおすすめします。早期に矯正治療を開始することで、骨格から受け口を改善でき、お子さんの負担も家庭の経済負担も軽減できるのです。
むらせ歯科幕張院では、透明なマウスピースを用いた目立ちにくい矯正治療から、歯列矯正用咬合誘導装置を使った小児矯正まで、幅広い治療オプションを提供しています。虫歯や歯周病の治療にも対応し、顎関節トラブルへの配慮も行いながら、お子さんの健やかな成長をサポートいたします。お子さんの受け口が気になる方は、ぜひお気軽にご相談ください。






